個人事業主として開業する手順|開業届・青色申告承認申請書の書き方を記入例つきで解説


「個人事業主として開業しよう」と決めたものの、何から手をつければいいのかわからない、という方は多いのではないでしょうか。開業届はいつまでに出せばいいのか、青色申告の手続きは必要なのか、屋号は決めておくべきなのか。

実際のところ、個人事業主としての開業手続きそのものは、法人設立に比べればシンプルです。とはいえ、書類ごとに提出期限が異なり、期限を過ぎると受けられなくなる制度もあるため、正しい順番と期限を知っておくことが大切です。この記事では、個人事業主として開業する際に必要な手続きの中で最も基本的な、開業届と青色申告承認申請書について解説していきます。

開業までの手順

1. 開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)の提出

個人事業主として開業する際、まず提出するのが「個人事業の開業・廃業等届出書」、いわゆる開業届です。提出先は、納税地を所轄する税務署です。

根拠条文|所得税法第229条(開業等の届出)

第二百二十九条 居住者又は非居住者は、国内において新たに不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を開始し、又は当該事業に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものを設け、若しくはこれらを移転し、若しくは廃止した場合には、財務省令で定めるところにより、その旨その他必要な事項を記載した届出書を、その事実があつた日の属する年分の所得税に係る確定申告期限までに、税務署長に提出しなければならない。

提出期限は、2026年1月1日以降に開業した方の場合、その事業を開始した日が属する年分の所得税の確定申告期限(原則として翌年3月15日)までとされています。以前は「開業から1か月以内」という期限でしたが、税制改正により提出期限が緩和されました。ただし、この後ご説明する青色申告承認申請書には別の期限が定められているため、開業届の提出自体を先延ばしにする理由にはなりません。開業が決まったら、早めに提出しておくと安心です。

開業届には、氏名・住所・マイナンバーのほか、事業の概要や開業日、屋号(決まっていれば)などを記入します。開業届はe-Taxソフトを使用して作成し、e-Taxにより提出することが推奨されています。書面による作成・提出も可能ですが、その場合は本人確認書類の添付が必要になります(e-Taxの場合は不要です)。

e-Taxの始め方やe-Taxソフトでの開業届の作成方法についての詳しい解説は他の記事に委ねるとして、実際にどこに何を書けばいいか、記入例でイメージを確認してみましょう(氏名・住所などはすべて架空の情報です)。

個人事業の開業・廃業等届出書の記載例(番号付き、氏名・住所等は架空の情報)
個人事業の開業・廃業等届出書の記載例(番号は記入順の目安です。氏名・住所等はすべて架空の情報です)
  1. 提出先の税務署名・提出日・マイナンバー:納税地を所轄する税務署名と提出日、マイナンバーを記入します。
  2. 氏名・生年月日・職業・屋号:屋号は決まっていれば記入しますが、空欄でも受理されます。
  3. 納税地の区分・住所・電話番号:自宅を事業所にする場合は区分欄に「5」(住所地)と記入します。
  4. 届出の区分:「開業」の欄に「1」を記入します。
  5. 所得の種類:多くの場合「事業(農業)所得」にチェックを入れます。
  6. 開業・廃業等日:実際に事業を開始した日を記入します。
  7. 「青色申告承認申請書」の提出の有無:同時に提出する場合は「有」にチェックします。
  8. 事業の概要:どのような事業を行うか、具体的に記載します。
  9. 給与等の支払の状況:従業員を雇う場合のみ記入します。該当しない場合は空欄のままで構いません。

2. 青色申告承認申請書の提出(提出期限に要注意)

確定申告で青色申告を選ぶと、最大65万円の青色申告特別控除や、赤字を翌年以降3年間繰り越せる制度、家族に支払う給与を経費にできる制度など、事業を続けていくうえで有利な制度を利用できるようになります。これらのメリットを受けたい場合は、「所得税の青色申告承認申請書」もあわせて提出します。

この申請書には開業届とは別の提出期限があり、原則として開業日から2か月以内です(1月1日〜1月15日に開業した場合は、その年の3月15日まで)。この期限を過ぎてしまうと、その年は自動的に白色申告となり、1年間は青色申告のメリットを受けられなくなってしまいます。開業届と同じタイミングで提出しておくと、出し忘れを防げます。

青色申告の特別控除制度についての詳しい解説は他の記事に委ねるとして、こちらも記入例でイメージを確認してみましょう(氏名・住所などはすべて架空の情報です)。

所得税の青色申告承認申請書の記載例(番号付き、氏名・住所等は架空の情報)
所得税の青色申告承認申請書の記載例(番号は記入順の目安です。氏名・住所等はすべて架空の情報です)
  1. 提出先の税務署名・提出日・生年月日:開業届と同じ税務署名・提出日を記入し、生年月日を記入します。
  2. 氏名・生年月日・職業・屋号:開業届と同じ内容を記入します。
  3. 納税地の区分・屋号:自宅を事業所にする場合は「5」(住所地)と記入します。
  4. 納税地の郵便番号・住所・電話番号:開業届と同じ内容を記入します。
  5. 「__年分以後の所得税の申告は、青色申告書によりたいので申請します」の年分:青色申告を始めたい年を記入します。
  6. 事業所又は所得の基因となる資産の名称及びその所在地:屋号や事業所の名称と所在地を記入します。
  7. 所得の種類:多くの場合「事業所得」を○で囲みます。
  8. いままでに青色申告承認の取消しを受けたこと又は取りやめをしたことの有無:初めて申請する場合は「無」を○で囲みます。
  9. 簿記方式:65万円の青色申告特別控除を受けるには「複式簿記」を○で囲みます。
  10. 備付帳簿名:複式簿記で使う帳簿を○で囲みます。65万円の青色申告特別控除を受けるには総勘定元帳・仕訳帳の作成が必須になります。

3. 屋号を決めるかどうか

開業届には屋号を記入する欄がありますが、屋号は必須ではなく、空欄のままでも開業届は受理されます。

4. あわせて提出できる書類

開業届を提出するタイミングでは、ご自身の状況に応じて次のような書類もあわせて提出できます。

  • 従業員を雇う場合:給与支払事務所等の開設届出書
  • 源泉徴収した所得税の納付を年2回にまとめたい場合:源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
  • 家族に給与を支払う予定がある場合:青色事業専従者給与に関する届出書

ご自身の状況にどれが当てはまるかわかりにくい場合は、開業届の提出前に一度お近くの税理士事務所等にご相談いただくと安心です。

よくある質問

Q. 開業届を出すと、会社員を辞めないといけませんか?
A. いいえ、そのようなことはありません。会社員として働きながら、副業として事業を行う場合も開業届は提出できます。ただし、勤務先が副業を禁止していないか、あらかじめ確認しておくことをおすすめします。

Q. 開業日はいつにすればいいですか?
A. 開業日について法律上の厳密な決まりはありません。最初の売上が発生した日や、事業のための契約を結んだ日など、ご自身の事業実態に合わせて決めていただいて構いません。

Q. 開業届を出さないとどうなりますか?
A. 提出しなくても罰則はありません。ただし、青色申告ができない、屋号付きの銀行口座が作りにくいなど、事業を続けていくうえで不便が生じやすくなります。開業を決めたタイミングで提出しておくことをおすすめします。

まとめ

開業届・青色申告承認申請書ともに、提出期限が細かく決まっており、特に青色申告承認申請書は期限を過ぎると1年間取り戻せません。一つひとつは難しい手続きではありませんが、初めての開業では判断に迷う場面も多いはずです。

まずは開業届と青色申告承認申請書という最初の2つの手続きを、期限内に一つずつ済ませていきましょう。事業が軌道に乗ってきた段階では「そろそろ法人にした方がいいのか」といった判断も出てきますが、それもまた、そのときどきで考えていけば大丈夫です。


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