開業したばかりで、「経理は何から手をつければいいのだろう」と迷う方は多いのではないでしょうか。日々の売上や経費の記録は、確定申告のためだけでなく、事業の状態を自分で把握するためにも欠かせない作業です。ここでは、創業1年目に押さえておきたい経理の基本を、着手する順番に沿ってご紹介します。
本記事は、個人事業主として開業した方を対象にした内容です。法人の場合は、複式簿記による記帳が原則義務であることに加え、勘定科目や決算処理の考え方も個人事業主と異なる部分があるため、あらためて別の機会にご紹介します。
1. 事業用の口座・カードを分ける
最初にやっておきたいのが、プライベートのお金と事業のお金を分けることです。事業用の銀行口座とクレジットカードを用意し、売上の入金や経費の支払いはできる限りそこに集約します。プライベートの支出と混ざったままだと、後から「これは事業の経費だったか」を確認する作業に時間がかかり、記帳の負担が大きくなってしまいます。また、自宅を事務所と兼用している場合の家賃・水道光熱費のように、プライベートと事業の両方にまたがる支出(家事按分が必要な費用)もあります。この場合も、まずは通常の生活費の口座から支払い、事業で使った割合分だけを経費として記帳するのが基本的な考え方です。
2. 記帳を習慣化する
売上や経費が発生するたびに、できるだけこまめに記録することが大切です。月末や確定申告直前にまとめて処理しようとすると、レシートの内容を思い出せなくなったり、作業量が膨らんで負担になったりします。freee・マネーフォワード・弥生などの会計ソフトを使うと、銀行口座やクレジットカードの明細を自動で取り込める機能があるため、手入力の手間を減らせます。週に一度など、決まったタイミングで入力する習慣をつけるのがおすすめです。
3. 領収書・レシートを保存する
経費として計上したものは、領収書やレシートを保存しておく必要があります。保存方法は、紙のまま保存する方法と、データとして保存する方法があり、電子帳簿保存法によって区分が整理されています。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 電子帳簿等保存 | 会計ソフトで作成した帳簿・書類をデータのまま保存する(任意) |
| スキャナ保存 | 紙で受け取った領収書等をスキャンしてデータ保存する(任意) |
| 電子取引データ保存 | メールやサイトからダウンロードした請求書・領収書等、最初からデータでやり取りしたものはデータのまま保存する(義務) |
紙で受け取った領収書は、これまでどおり紙のまま保存しても問題ありません。一方、ネット通販サイトからダウンロードした領収書、クラウド会計ソフト・サブスクリプションサービスの請求書、キャッシュレス決済の利用明細メールなど、最初からデータで受け取ったものは、紙に印刷して保存するのではなく、データのまま保存することが求められます。保存要件の細かい部分(ファイル名の付け方、検索要件など)は事業規模によって緩和措置もあるため、〔要ファクトチェック:自身の事業規模で適用される保存要件の詳細〕、迷った場合は確認しておくと安心です。なお、会計ソフトの多くは、こうしたデータ保存の要件に対応した機能を備えているため、記帳と合わせて活用すると管理の手間を減らせます。
4. 青色申告を見据えた帳簿を付ける
開業届と合わせて青色申告承認申請書を提出している方は、複式簿記による記帳を行うことで、青色申告特別控除などの税制上のメリットを受けられます(開業手続きについては、以前の記事「個人事業主として開業する手順」もご参照ください)。複式簿記と聞くと難しく感じるかもしれませんが、会計ソフトを使えば、日々の入力は現金出納帳のような感覚で行いつつ、必要な帳簿を自動的に作成してくれます。
創業1年目の年間スケジュールの目安
- 開業〜:事業用口座・カードの用意、会計ソフトの選定
- 毎月:売上・経費の記帳(週1回程度のペースが理想)
- 四半期ごとの目安:記帳内容に抜け漏れがないか、まとまった時間をとって見直す
- 12月:1年間の記帳内容の見直し、経費の計上漏れがないか確認
- 翌年1月:前年分の帳簿を締め、確定申告に向けた資料(保険料控除証明書等)を集め始める
- 翌年2月中旬〜3月中旬:確定申告書の作成・提出
よくある疑問
Q. 記帳は自分でやらないといけませんか?
A. ご自身で行うことも、会計ソフトを使いながら税理士に確認してもらうことも可能です。まずはご自身で記帳の流れを掴んでおくと、事業の数字への理解が深まります。
Q. 領収書がもらえなかった支出はどうすればいいですか?
A. 出金伝票を作成し、日付・支払先・金額・内容を記録しておくことで、経費として計上できる場合があります。
まとめ
創業1年目の経理は、「口座を分ける」「こまめに記帳する」「領収書を正しく保存する」という3つの基本を押さえることから始まります。最初の習慣づけができれば、確定申告の時期になって慌てることも少なくなります。
