個人勢配信者、いつ開業届を出すべきか


配信活動の収入が少しずつ増えてくると、「開業届を出したほうがいいのだろうか」と考え始める方は多いのではありませんか。会社員の副業と違い、個人勢の配信活動は収益化の形も収入の波も一人ひとり違うため、「いつが正解か」を判断しづらいテーマです。この記事では、開業届を出すかどうかを考えるときの判断軸と、実際に出す場合の注意点を整理します。

開業届とは

開業届(正式には「個人事業の開業・廃業等届出書」)は、個人が新たに事業を始めたことを税務署に知らせるための書類です。開業届自体の書き方や、あわせて提出する青色申告承認申請書については、「個人事業主として開業する手順」で詳しく解説していますので、書類の記入方法はそちらをご参照ください。この記事では、配信者ならではの「いつ出すべきか」という判断の部分に絞って解説します。

判断の軸:「事業所得」か「雑所得」か

開業届を出すべきかどうかは、配信活動による所得が税務上「事業所得」(=反復・継続して営利目的で行う事業から生じる所得のことです)に当たるか、「雑所得」(=事業と言えるほどの規模・継続性がない所得のことです)に当たるかが一つの目安になります。開業届は事業所得として届け出るための書類なので、雑所得にとどまる規模であれば、必ずしも提出が必要というわけではありません。

国税庁は令和4年10月、この区分の考え方を明確にする通達(所得税基本通達35-2)を発遣しています。ポイントは「帳簿書類の保存があるかどうか」です。

根拠条文|所得税基本通達35-2(業務に係る雑所得の例示)

要旨:事業所得と認められるかどうかは活動の実態で判定するが、帳簿書類の保存がなければ、収入300万円を超えていても事業と認められる事実がない限り雑所得として扱われる

(注)事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定する。なお、その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合(その所得に係る収入金額が300万円を超え、かつ、事業所得と認められる事実がある場合を除く。)には、業務に係る雑所得…に該当することに留意する。

たとえば、年間収入が200万円で帳簿をつけていない場合は雑所得、同じ200万円でも帳簿をつけて保存していれば事業所得として扱われやすくなります。年間収入が300万円を超えている場合は、帳簿をつけていなくても事業所得と認められる事実(継続性・営利性など)があれば事業所得として扱われますが、僅少な収入や赤字が続いているなど営利性が乏しいと判断されるケースでは、帳簿の保存があっても事業所得と認められないことがある点には注意してください。

配信活動ならではの判断ポイント

この「事業といえるかどうか」の判定は、配信活動の場合、次のような点を総合的に見て考えることになります。

  • 継続的に配信・投稿を行っているか(単発的な活動ではないか)
  • 投げ銭・スパチャ・企業案件などの収益化手段を実際に利用しているか
  • 収入や経費の記録(帳簿)をつけているか
  • 本業(会社員としての給与収入等)に対して、配信活動の規模がどの程度か

会社員や学生が副業として配信を行っているケースについては、判断の軸がさらに変わってくる部分があるため、この記事では扱いません。ここでは、配信活動を中心の収入源として継続的に行っている個人勢の方を主な対象として想定しています。

開業届を出すメリット

開業届を出し、あわせて青色申告承認申請書を提出しておくと、次のようなメリットがあります。

メリット内容
青色申告特別控除要件を満たせば最大65万円の所得控除が受けられる
屋号での銀行口座活動用の口座を屋号付きで開設しやすくなる
経費計上の説得力機材費・衣装費等を事業の経費として整理しやすくなる
赤字の繰越青色申告なら事業が赤字になった年の損失を翌年以降3年間繰り越せる

特に配信活動は、機材への初期投資がかさむ一方で収益化までに時間がかかることも珍しくありません。赤字の繰越ができる点は、活動を始めたばかりの時期には見落とされがちですが、事業所得として届け出るメリットの一つです。

実際に出す場合の注意点

開業届を出すと決めた場合、次の点に注意してください。

  1. 提出期限は事業開始から1か月以内が目安ですが、遅れても罰則はありません。ただし青色申告特別控除を年内から使いたい場合は、青色申告承認申請書の提出期限(原則としてその年の3月15日まで。ただしその年の1月16日以後に開業した場合は、事業開始の日から2か月以内)に間に合わせる必要があります。
  2. 開業届の「事業の概要」欄には、「動画配信業」「コンテンツ制作業」のように、実際の活動内容がわかる表現で記入します。
  3. 開業日は、実際に配信活動を収益化目的で始めた日(アカウント開設日や初配信日など、判断しやすい日)を目安にします。

青色申告承認申請書を同時に提出しておけば、開業した年から青色申告のメリットを受けられます。年をまたいで提出してしまうと、前年分にさかのぼって青色申告特別控除を使うことはできない点も、あわせて覚えておいてください。

なお、開業届を出すことにはメリットだけでなく、知っておきたい点もあります。事業所得として届け出るということは、帳簿づけや確定申告の手間がそれだけ増えるということでもあります。また、親や配偶者の扶養に入っている場合は、事業所得が一定額を超えると扶養から外れることがある点もあわせて確認してください(これは開業届を出すこと自体が原因ではなく、所得の金額によって扶養の判定が変わるためです)。

まとめ

個人勢配信者が開業届を出すかどうかは、活動が税務上「事業所得」と言えるだけの継続性・規模を持っているかが判断の出発点になります。帳簿の保存の有無や収入金額の規模を目安に検討し、事業として届け出る方向であれば、青色申告特別控除等のメリットを逃さないよう、開業届と青色申告承認申請書をあわせて早めに提出することをおすすめします。


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