青色申告とは何か、白色申告との違い


個人事業主として開業する際、「青色申告」という言葉を目にする機会は多いものの、白色申告と何が違うのか、自分にとってどちらが向いているのかがよくわからないという方は多いのではありませんか。この記事では、青色申告と白色申告それぞれの特徴と主な違いを整理し、判断の目安をご紹介します。

青色申告・白色申告とは

個人事業主の確定申告には、青色申告と白色申告の2種類があります。青色申告は、一定の要件を満たす帳簿を作成・保存することを条件に、税制上のさまざまな優遇措置が受けられる申告方法です。事前に税務署へ「所得税の青色申告承認申請書」を提出しておく必要があります。一方、白色申告は事前の届出が不要で、青色申告に比べて簡易な帳簿づけで申告できる方法ですが、税制上の優遇措置は限られます。

根拠条文|所得税法第143条(青色申告)

要旨:不動産所得・事業所得・山林所得を生ずる業務を行う人は、税務署長の承認を受ければ、青色の申告書で確定申告できると定められています。

不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき業務を行なう居住者は、納税地の所轄税務署長の承認を受けた場合には、確定申告書及び当該申告書に係る修正申告書を青色の申告書により提出することができる。

根拠条文|所得税法第144条(青色申告の承認の申請)

要旨:青色申告の承認を受けるための申請書は、原則としてその年の3月15日まで、その年の1月16日以後に事業を開始した場合は開業日から2か月以内に提出しなければならないと定められています。

その年分以後の各年分の所得税につき前条の承認を受けようとする居住者は、その年三月十五日まで(その年一月十六日以後新たに同条に規定する業務を開始した場合には、その業務を開始した日から二月以内)に、当該業務に係る所得の種類その他財務省令で定める事項を記載した申請書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。

主な違い一覧

項目青色申告白色申告
事前の届出必要(原則その年の3月15日まで。その年の1月16日以後に開業した場合は開業の日から2か月以内)不要
記帳の方法複式簿記が基本(10万円控除のみ簡易簿記も可)簡易な帳簿(単式簿記)
特別控除最大65万円(要件により55万円・10万円)なし
家族への給与青色事業専従者給与として全額を必要経費にできる事業専従者控除(配偶者86万円、その他の親族50万円が上限)
赤字の繰越翌年以後3年間繰り越せる原則できない(一部の被災事業用資産の損失を除く)
少額減価償却資産の特例40万円未満の資産を一括で経費にできる(2026年3月31日までの取得分は30万円未満。年間合計300万円が上限)適用できない

青色申告特別控除、3段階の違い

青色申告の代表的なメリットである青色申告特別控除には、65万円・55万円・10万円の3段階があります。それぞれの要件は次の通りです。

  1. 55万円控除:事業所得または不動産所得を生ずべき事業を営んでいて、複式簿記(=取引を借方・貸方の両面から記録する記帳方法のことです)で記帳し、それに基づいて作成した貸借対照表・損益計算書を確定申告書に添付して、申告期限までに提出する必要があります
  2. 65万円控除:上記55万円控除の要件に加えて、e-Taxによる電子申告、または電子帳簿保存のいずれかを行う必要があります
  3. 10万円控除:複式簿記によらない簡易な記帳(単式簿記)で青色申告をする場合など、上記の要件を満たさない場合に適用される

複式簿記(税法上は「正規の簿記の原則」と呼ばれます)での記帳は白色申告の簡易な帳簿づけに比べて手間がかかりますが、会計ソフトを使えば、日々の取引を入力するだけで自動的に複式簿記の形式に変換してくれるため、以前ほど大きなハードルではなくなっています。

根拠条文|所得税法施行規則第57条(青色申告者の帳簿書類)

要旨:青色申告者は、正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)に従って取引を記録し、その記録に基づいて貸借対照表・損益計算書を作成しなければならないと定められています。

青色申告者は、青色申告書を提出することができる年分の不動産所得の金額、事業所得の金額及び山林所得の金額が正確に計算できるように次の各号に掲げる資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引を正規の簿記の原則に従い、整然と、かつ、明りように記録し、その記録に基づき、貸借対照表及び損益計算書を作成しなければならない。

青色申告のその他のメリット

特別控除以外にも、青色申告には次のようなメリットがあります。

  • 青色事業専従者給与:生計を共にする家族に事業を手伝ってもらい支払う給与を、届出をすれば全額必要経費にできます。白色申告では、配偶者86万円・その他の親族50万円を上限とする「事業専従者控除」という別の仕組みになります
  • 純損失の繰越控除:事業が赤字になった年の損失を、翌年以後3年間にわたって黒字と相殺できます
  • 少額減価償却資産の特例:本来は数年かけて減価償却する40万円未満の資産を、取得した年に一括で経費にできます(2026年3月31日までの取得分は30万円未満が対象、年間合計300万円が上限)

根拠条文|所得税法第57条第1項(青色事業専従者給与)

要旨:青色申告者と生計を一にする配偶者・親族で、もっぱらその事業に従事する人(青色事業専従者)に支払う給与のうち、労務の対価として相当と認められる金額は、必要経費に算入できると定められています。

青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている居住者と生計を一にする配偶者その他の親族(年齢十五歳未満である者を除く。)で専らその居住者の営む前条に規定する事業に従事するもの(以下この条において「青色事業専従者」という。)が当該事業から次項の書類に記載されている方法に従いその記載されている金額の範囲内において給与の支払を受けた場合には、前条の規定にかかわらず、その給与の金額でその労務に従事した期間、労務の性質及びその提供の程度その他の政令で定める状況に照らしその労務の対価として相当であると認められるものは、その居住者のその給与の支給に係る年分の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上必要経費に算入し、かつ、当該青色事業専従者の当該年分の給与所得に係る収入金額とする。

根拠条文|所得税法第70条(純損失の繰越控除)

要旨:確定申告書を提出する人は、前年以前3年内に生じた純損失(赤字)の金額を、その年分の所得金額の計算上控除できると定められています。

確定申告書を提出する居住者のその年の前年以前三年内の各年において生じた純損失の金額がある場合には、当該純損失の金額に相当する金額は、政令で定めるところにより、当該確定申告書に係る年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額の計算上控除する。

根拠条文|租税特別措置法第28条の2(中小事業者の少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例)

要旨:青色申告書を提出する中小事業者が取得した少額の減価償却資産は、取得価額の全額をその年の必要経費に算入できると定められています(年間合計300万円が上限)。令和8年度税制改正により、対象となる取得価額の基準は令和8年4月1日以後の取得分から40万円未満に引き上げられました(それ以前の取得分は30万円未満が対象)。

中小事業者で青色申告書を提出するものが、取得し、若しくは製作し、又は建設し、かつ、その事業の用に供した減価償却資産で、その取得価額が四十万円未満であるもの(少額減価償却資産)を有する場合には、その取得価額に相当する金額を、その業務の用に供した年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入する。ただし、その年における少額減価償却資産の取得価額の合計額が三百万円を超えるときは、その取得価額の合計額のうち三百万円に達するまでの少額減価償却資産に係る取得価額の合計額とする。

白色申告のメリット

白色申告のメリットは、なんといっても手続きの手軽さです。事前の届出が不要なため、確定申告の直前に「今年から個人事業主として申告する」と決めた場合でも対応できますし、記帳も単式簿記(=収入と支出だけを時系列に記録する、家計簿に近い記帳方法のことです)で足りるため、簿記の知識がなくても始めやすいという特徴があります。ただし、平成26年1月以降は、事業所得のある白色申告者は事業規模を問わず記帳と帳簿の保存が義務付けられているため、「届出が不要=記帳しなくてよい」という意味ではない点に注意してください。

根拠条文|所得税法第232条第1項(事業所得等を有する者の帳簿書類の備付け等)

要旨:不動産所得・事業所得・山林所得を生ずる業務を行う人(青色申告の承認を受けている人を除く=白色申告者)は、帳簿を備え付けて取引を記録し、保存しなければならないと定められています。

その年において不動産所得、事業所得若しくは山林所得を生ずべき業務を行う居住者…(青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている者を除く。)は、財務省令で定めるところにより、帳簿を備え付けてこれにこれらの所得を生ずべき業務に係るその年の取引…のうち総収入金額及び必要経費に関する事項を財務省令で定める簡易な方法により記録し、かつ、当該帳簿…を保存しなければならない。

どちらを選ぶべきか

結論から言うと、事業として継続していくつもりであれば、青色申告を選んでおくメリットの方が大きいケースがほとんどです。届出の手間や複式簿記への抵抗感はありますが、会計ソフトの普及により記帳のハードルは下がっていますし、65万円の特別控除だけでも税負担への影響は小さくありません。開業したばかりでまだ様子を見たい、事業規模が非常に小さいうちだけ簡易に済ませたい、という場合に限り、白色申告を選ぶ余地があります。

開業届とあわせて青色申告承認申請書を提出するタイミングや、開業後に必要になる周辺の届出については、「個人事業主として開業する手順」「創業直後にやるべき税務手続きチェックリスト」もあわせてご参照ください。

まとめ

青色申告と白色申告の最大の違いは、事前の届出と一定水準の記帳を条件に、特別控除・専従者給与の全額必要経費算入・赤字の繰越といった優遇措置が受けられるかどうかです。事業を継続していく前提であれば、青色申告を選んでおくのが基本的な考え方になります。


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