消費税の申告は年に1回だと思っていたところ、「中間申告」という言葉を目にして、自分も対象になるのか気になっている方はいませんか。消費税の申告・納付の基本的な流れは消費税の申告・納付はいつ、どうやってやるのかで紹介しました。この記事では、そこで簡単に触れた中間申告について、対象になる基準、申告の回数と期限、納める金額の決まり方を掘り下げて整理します。なお、中間申告は前年の消費税額で判定するため、開業したばかりの方がすぐに対象になることはありません。
中間申告とは、1年分の消費税の一部を年の途中で前払いする仕組み
消費税の課税期間(=消費税額を計算する単位となる期間のことで、個人事業主は1月1日〜12月31日の1年間です)は原則として1年で、確定申告も年に1回です。ただし、前年の消費税の年税額が一定の金額を超えている場合は、年の途中にも申告と納付を行う必要があります。これが中間申告です。
中間申告で納めた税額は、翌年の確定申告のときに1年分の消費税額から差し引かれ、差し引ききれない分は還付されます。つまり中間申告は、税金が増える制度ではなく、1年分の消費税の一部を年の途中で前払いする仕組みです。
対象になるかどうかは「前年の消費税額」で決まる
中間申告が必要かどうかの判定に使うのは、直前の課税期間(個人事業主なら前年、法人なら前事業年度)の確定消費税額です。確定消費税額とは、確定申告で確定した消費税の1年分の税額(中間申告で納めた分を差し引く前の金額)のことで、地方消費税は含みません。この金額が48万円を超えると、中間申告の提出と納付が義務付けられます。今年の売上の見込みではなく、前年の実績で決まる点がポイントです。
手元の確定申告書の控えで確認する場合は、⑨欄の「差引税額」を見てください。これが地方消費税を含まない確定消費税額です。納付書で実際に納めた合計額(地方消費税を含む金額)と比べると、判定を誤るので注意してください。地方消費税を含めた年税額でいえば、約61.5万円(48万円×100/78)を超えるかどうかが目安になります。
前年の確定消費税額に応じて、中間申告の回数と1回あたりに納める金額は次のように変わります。
| 前年の確定消費税額 | 中間申告の回数 | 1回あたりの納付額(国税分) | 1年間の申告回数の合計 |
|---|---|---|---|
| 48万円以下 | 原則不要(任意の中間申告制度あり) | — | 確定申告1回 |
| 48万円超〜400万円以下 | 年1回 | 前年の確定消費税額の12分の6 | 確定申告1回+中間申告1回 |
| 400万円超〜4,800万円以下 | 年3回 | 前年の確定消費税額の12分の3 | 確定申告1回+中間申告3回 |
| 4,800万円超 | 年11回 | 前年の確定消費税額の12分の1 | 確定申告1回+中間申告11回 |
表の納付額は国税分の消費税額です。実際には、これにあわせて地方消費税(国税分の78分の22)も一緒に納付します。なお、前年の課税期間が12か月に満たない場合は、計算方法が異なります。
根拠条文|消費税法第42条第6項(課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについての中間申告)
要旨:課税期間の開始から6か月の期間について、前年の確定消費税額を月数で割って6を掛けた金額が24万円を超える事業者(前年の年税額でいえば48万円超)は、その期間の末日の翌日から2か月以内に中間申告書を提出しなければならないと定められています。個人事業主が事業を開始した年は対象外です。年3回・年11回の中間申告は、同じ条の第4項・第1項に定められています。免税事業者と、課税期間の特例の届出をしている事業者が対象外であることも、同じ条の第1項に定められています。
事業者は、その課税期間(個人事業者にあつては事業を開始した日の属する課税期間、法人にあつては六月を超えない課税期間及び新たに設立された法人のうち合併により設立されたもの以外のものの設立の日の属する課税期間を除く。)開始の日以後六月の期間(以下この項、第八項、第十項及び第十一項において「六月中間申告対象期間」という。)につき、当該六月中間申告対象期間の末日の翌日から二月以内に、次に掲げる事項を記載した申告書を税務署長に提出しなければならない。ただし、第一号に掲げる金額が二十四万円以下である場合又は当該六月中間申告対象期間が第一項若しくは第四項の規定による申告書を提出すべきこれらの規定に規定する一月中間申告対象期間若しくは三月中間申告対象期間を含む期間である場合における当該六月中間申告対象期間については、この限りでない。
一 当該課税期間の直前の課税期間の確定申告書に記載すべき第四十五条第一項第四号に掲げる消費税額で当該六月中間申告対象期間の末日までに確定したものを当該直前の課税期間の月数で除し、これに六を乗じて計算した金額
二 前号に掲げる金額の計算の基礎その他財務省令で定める事項
消費税の計算方法には、主に本則課税と簡易課税があります。本則課税は、売上にかかる消費税額から仕入れにかかる消費税額を実際に差し引いて計算する方法、簡易課税は、売上にかかる消費税額に業種ごとの一定割合を掛けて仕入れにかかる消費税額を計算する方法です。本則課税でも簡易課税でも、前年の確定消費税額が48万円を超えていれば中間申告が必要です。2つの計算方法の違いは消費税の本則課税と簡易課税、その違いについてで紹介しています。
中間申告が不要になる主なケース
次のような場合は、中間申告をする必要がありません。
- 前年の確定消費税額が48万円以下の場合
- 免税事業者(=消費税を納める義務が免除されている事業者のことです)の場合
- 個人事業主が事業を開始した年の場合
- 課税期間の特例(=課税期間を3か月ごと、または1か月ごとに短く区切る制度のことです)を適用している場合
開業したばかりの方がすぐに中間申告の対象になることはありません。対象になるのは、課税事業者(=消費税を納める義務がある事業者のことです)として確定申告を行い、その年税額が48万円を超えた場合の翌年からです。そもそも消費税を納める立場になるかどうかは、インボイス登録すべきか?免税事業者のままでいるべきか?もあわせて確認してください。
中間申告の期限(個人事業主の場合)
中間申告の提出と納付の期限は、原則として各中間申告の対象となる期間の末日の翌日から2か月以内です。個人事業主の場合、回数ごとの対象期間と期限は次のとおりです。
| 中間申告の回数 | 対象となる期間 | 申告・納付の期限 |
|---|---|---|
| 年1回 | 1月〜6月 | 8月31日 |
| 年3回 | 1月〜3月/4月〜6月/7月〜9月 | 5月31日/8月31日/11月30日 |
| 年11回 | 1月分・2月分・3月分 | いずれも5月31日 |
| 年11回 | 4月分〜11月分 | 各月の末日の翌日から2か月以内 |
最後の期間(年1回なら7月〜12月、年3回なら10月〜12月、年11回なら12月分)は中間申告の対象にならず、翌年の確定申告でまとめて精算します。
たとえば、前年の確定消費税額が78万円だった個人事業主は、年1回の中間申告の対象になります。前年実績で計算すると、8月31日までに、消費税39万円(78万円×12分の6)と地方消費税11万円(39万円×78分の22)の合計50万円を納めることになります。
前年実績による中間申告の対象になると、所轄の税務署から、納める税額があらかじめ記載された「消費税及び地方消費税の中間申告書」と「納付書」が送られてきます。必要事項を記入して中間申告書を提出し、期限までに納付します。中間申告はe-Taxで行うこともできます。
納める金額は「前年実績」と「仮決算」のどちらかで計算する
中間申告で納める金額は、原則として先ほどの表のとおり、前年の確定消費税額をもとに計算します。これに代えて、仮決算(=中間申告の対象となる期間だけを区切って、その期間の実際の取引をもとに消費税額を計算することです)で計算した税額により申告・納付することもできます。たとえば今年の売上が前年より落ち込んでいて、前年実績で計算すると実際の取引に比べて多く前払いすることになりそうな場合に、選択肢のひとつになります。
仮決算を選ぶ場合は、次の点に注意が必要です。
- 仮決算で計算した税額がマイナスになっても、中間申告の段階では還付を受けられません
- 簡易課税を選択している場合は、仮決算でも簡易課税の方法で計算します
- 仮決算による中間申告書には、その期間中の売上の金額や仕入れにかかる消費税額の明細などを記載した書類を添付します
- 期限を過ぎてから、仮決算による中間申告書を提出することはできません(理由は次の見出しで説明します)
仮決算は、年の途中で帳簿をいったん締めて税額を計算する手間がかかります。前年実績との差額の大きさと、その手間を比べて判断することになります。
中間申告書を提出しなかった場合
中間申告の義務がある事業者が期限までに中間申告書を提出しなかった場合、前年の確定消費税額に基づいて計算した税額で、中間申告書を提出したものとみなされます。その税額はそのまま確定するため、後から仮決算による申告書に差し替えることはできません。
また、納付が期限より遅れると、中間申告であっても延滞税(=納期限までに税金を納めなかった場合に、遅れた日数に応じて本来の税額に上乗せして納める税のことです)がかかります。確定申告の時期だけでなく、中間申告の期限もカレンダーなどに登録して管理しておくと、うっかり遅れる事態を防ぎやすくなります。
48万円以下でも使える「任意の中間申告制度」
前年の確定消費税額が48万円以下で中間申告の義務がない事業者でも、届出書を所轄の税務署に提出すれば、自主的に年1回の中間申告・納付を行えます。これを任意の中間申告制度といいます。確定申告のときに1年分の消費税をまとめて納めるのではなく、年の途中に分けて納めておきたい場合に使える制度です。
この制度を使っても、1年間に納める消費税の総額は変わりません。変わるのは納めるタイミングです。売上と一緒に受け取った消費税は、普段の運転資金と同じ口座に入るため、確定申告のときに1年分をまとめて納めようとすると、思った以上に大きな金額になり資金繰りが苦しくなることがあります。前年の確定消費税額の半分を年の途中で納めておけば、1回あたりの納付額が小さくなり、納税資金を準備しやすくなります。一方で、前払いした分だけ手元のお金が早く出ていくため、事業の資金に余裕があるかどうかとあわせて判断することになります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象になる事業者 | 前年の確定消費税額が48万円以下の事業者 |
| 始め方 | 任意の中間申告書を提出する旨の届出書を、所轄の税務署に提出する |
| 適用が始まる時期 | 届出書を提出した日以後に、末日が最初に到来する6か月の中間申告対象期間から |
| 納付額 | 前年の確定消費税額の12分の6(国税分。あわせて地方消費税も納付。仮決算による計算も可) |
| 期限 | 6か月の対象期間の末日の翌日から2か月以内(個人事業主なら8月31日) |
義務としての中間申告と違い、任意の中間申告制度では、期限までに中間申告書を提出しなかった場合に「提出したもの」とはみなされません。この場合は、制度の適用をやめる旨の届出書を提出したものとみなされ、その回は中間納付ができなくなります。翌年以降もこの制度を使いたい場合は、あらためて届出書を提出する必要があります。
まとめ
消費税の中間申告が必要かどうかは、今年の売上ではなく、前年の確定消費税額(地方消費税を除く)が48万円を超えているかどうかで決まります。48万円を超えると年1回、400万円を超えると年3回、4,800万円を超えると年11回の中間申告が必要になり、納める金額は前年実績か仮決算のどちらかで計算します。義務がある場合は、提出を忘れると前年実績の税額で申告したものとみなされるため、事業が軌道に乗って消費税額が増えてきたら、前年の確定申告書の控えで、中間申告で納めた分を差し引く前の年税額を確認し、年の途中の期限もあらかじめ把握しておいてください。
