補助金と融資の違い、使い分け


創業資金について調べ始めると、「融資」と「補助金」という2つの言葉に出会います。どちらも事業のためのお金を用意する手段なので、似たようなものだと考えている方は多いのではありませんか。実はこの2つ、お金の性質もタイミングも、まったく違う制度です。今回は、この違いと使い分けの考え方を整理します。

融資とは何か

融資とは、金融機関等から事業資金を借り入れ、期限までに利息を付けて返済する制度のことです。日本政策金融公庫や民間の銀行・信用金庫が窓口になり、審査を経てお金を貸してもらいます。創業融資の審査で見られるポイントで触れたとおり、審査では事業の実現性や返済能力が確認されます。

融資の一番の特徴は、審査に通れば比較的早い段階でまとまった資金が手元に入ることです。使いみちも、設備資金・運転資金の範囲内であれば、補助金ほど細かい制約はありません。その代わり、借りたお金は必ず返済しなければならず、利息という追加の負担も発生します。

創業期に使える融資には、日本政策金融公庫が直接貸し出す融資と、信用保証協会の保証を付けて民間金融機関から借りる制度融資の、大きく2つのルートがあります。それぞれの違いは創業融資と信用保証協会付き融資の違いで解説していますので、あわせて参考にしてください。

補助金とは何か

補助金とは、国や自治体等が、創業促進や地域経済の活性化といった政策目的を達成するために、要件を満たした事業者へ交付する返済不要の資金のことです。融資と違い、原則として返す必要がありません。

ただし、補助金には融資にはない大きな特徴があります。多くの補助金は「後払い(精算払い)」の仕組みになっているのです。中小機構(独立行政法人中小企業基盤整備機構)が運営する中小企業支援ポータル「J-Net21」の解説では、たとえば総額300万円の事業に3分の1の補助率が適用される場合でも、まず事業者が自分のお金で300万円を支出する必要があると説明されています。つまり、補助金が交付されるのは、経費を実際に使い終わったあとです。

また、補助金は予算や採択件数があらかじめ決まっているものが多く、申請すれば必ず受給できるというわけではありません。要件を満たせば受給できる可能性が高い「助成金」とは、この点でも性格が異なります。補助金と助成金の違いについては、別の記事であらためて整理する予定です。

融資と補助金、何がどう違うか

融資補助金
返済の要否返済が必要(利息付き)原則返済不要
入金のタイミング審査通過後、比較的早期にまとまった額が入金経費を支出したあとの後払い(精算払い)が原則
受けられる可能性審査に通れば受けられる予算・採択件数の制約があり、申請しても受給できるとは限らない
資金使途の自由度設備資金・運転資金の範囲で比較的柔軟対象経費・対象期間が細かく指定される

「後払い」が実務でどう効いてくるか

補助金だけを頼りに、開業前の設備投資や広告費をまかなおうとすると、資金繰りに詰まる可能性があります。補助金の入金は経費支出のあとになるため、それまでの立て替え資金を、自己資金や融資で用意しておく必要があるからです。「補助金が決まってから動く」のではなく、「まず自分のお金や融資で動き、あとから補助金で一部を取り戻す」という順番になる点は、創業前に理解しておきたいポイントです。

具体的な数字で考えてみます。総額300万円の設備投資に、補助率3分の1の補助金を使う場合、まず事業者自身が300万円全額を立て替えて支払います。工事や納品が完了し、証拠書類(見積書・契約書・領収書等)をそろえて実績報告を行ったあとで、ようやく100万円程度の補助金が入金される、という流れです。この「立て替えている期間」の資金が手元になければ、そもそも補助金の対象になる支出自体ができません。

また、補助金は交付が決定する前に発注や契約を済ませてしまうと、原則として対象外になります。この点は、鎌ケ谷市の空き店舗活用補助金を扱った別記事でも触れた、多くの補助金に共通する落とし穴です。「よさそうな補助金を見つけたので、先に発注してしまった」というのは、補助金活用で特に注意したい失敗です。

申請から補助金の入金までを、発注・支払いのタイミングとあわせて時系列で並べると、次のようになります(補助金ごとに手続きの名称や細かい順番は異なります)。

図解|補助金の申請から入金までの流れ(一般的な例)

① 申請

公募要領を確認し、事業計画書や見積書などをそろえて申請する

② 採択・交付決定

審査を経て採択され、補助金を交付することが正式に決まる(採択のあとに交付申請を行い、改めて交付決定を受ける補助金もある)

②の交付決定までは、申請前も含めて発注・契約をしない
交付決定より前に契約・購入したものは、原則として補助対象外(採択されただけの段階もまだ発注しない)

③ 発注・契約

交付決定のあとに、補助対象の設備やサービスを発注する

③の発注から⑦の入金までが「立て替え期間」
支払いは自己資金や融資でまかなう

④ 納品・支払い(経費の支出)

事業者が代金の全額を支払う

⑤ 実績報告

見積書・契約書・領収書などの証拠書類をそろえて報告する

⑥ 確定検査・補助金額の確定

対象経費や事業内容が適切だったかが審査され、受け取れる金額が決まる

⑦ 補助金の入金(精算払い)

確定した補助金額が振り込まれる

使い分けの考え方

創業期の資金計画では、次のような役割分担で考えると整理しやすくなります。

  • 当面の運転資金や仕入れ資金など、事業を回していくための資金は、スピードと自由度を優先して融資で確保する
  • 設備投資やホームページ制作など、補助金の対象要件に合う支出があれば、融資に加えて補助金の活用も検討する
  • 補助金はあくまで「後から一部が戻ってくるお金」であり、開業当初の資金繰り全体を補助金だけに頼らない

融資も含めた資金計画全体の組み立て方は、事業計画書の書き方(融資を通すための視点)でも詳しく解説しています。

よくある疑問

Q. 融資と補助金は、両方同時に使うことはできますか?
A. 制度上、両方を組み合わせて使うこと自体は可能です。たとえば、補助金の立て替え資金を融資でまかない、経費支出後に補助金で一部を回収するという組み合わせ方ができます。ただし、それぞれの制度の要件・スケジュールが独立して動くため、資金計画を立てる段階で両方の入金タイミングを別々に押さえておく必要があります。

Q. 創業したばかりでも補助金は使えますか?
A. 小規模事業者持続化補助金〈創業型〉のように、創業間もない事業者を対象にした補助金も用意されています。ただし多くの補助金は「交付決定前の支出は対象外」という原則をとっているため、開業準備を始める前に対象となる補助金がないか調べておくと、使える選択肢を取りこぼしにくくなります。

まとめ

融資は「借りて返す」お金、補助金は「後から一部が戻ってくる」お金です。性質もタイミングもまったく異なるため、どちらか一方で創業資金をすべてまかなおうとせず、それぞれの特徴を踏まえて組み合わせる視点を持っておくと、資金計画の見通しが立てやすくなります。特に補助金は、対象になりそうな支出が見つかったら、発注前の段階で一度立ち止まり、交付決定のタイミングを確認する習慣をつけておくと安心です。


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