習志野市で開業するにあたって資金を借りたいとき、日本政策金融公庫(以下「公庫」)の創業融資のほかに、習志野市にも中小企業向けの融資制度があります。「市の制度と公庫、どちらに申し込めばいいのか」「市の制度は自分も対象になるのか」で迷っていませんか。
この記事では、習志野市中小企業資金融資制度のうち、創業する人が使える「創業支援資金」の内容を、市が公表している令和8年度の案内(令和8年4月版のリーフレット)をもとに整理し、公庫の融資との違いと使い分けの考え方をまとめます。
習志野市中小企業資金融資制度とは
習志野市中小企業資金融資制度は、市内の中小企業者が、市内で事業を営むために必要な資金を低い金利で借りられるようにする制度です。このように自治体が金融機関や信用保証協会と連携して用意している融資の仕組みを、一般に「制度融資」と呼びます。
信用保証協会は、事業者が金融機関からお金を借りる際に、保証人の役割を担う公的な機関です。習志野市中小企業資金融資制度で借りるには、千葉県信用保証協会の保証を受けることが条件になっています。
お金を貸すのは市ではなく、市が指定した取扱金融機関(千葉銀行・千葉興業銀行・京葉銀行・千葉信用金庫・東京東信用金庫・三井住友銀行・りそな銀行の7機関22支店)です。制度融資と公庫の融資の仕組みの違いは、創業融資と信用保証協会付き融資の違いで詳しく整理しています。
創業する人が使える「創業支援資金」
この制度にはいくつかの資金がありますが、多くの資金は「市内で1年以上同じ事業を営んでいること」が申込みの条件です。これから開業する人や開業して間もない人が使えるのは、主に「創業支援資金」です。令和8年度の内容は次のとおりです。
| 項目 | 内容(令和8年4月版のリーフレットより) |
|---|---|
| 限度額 | 1,000万円以内 |
| 融資期間 | 運転資金:5年以内(据置6か月以内) 設備資金:7年以内(据置1年以内) |
| 融資利率 | 融資期間によって異なる(1年以内1.8%、1年超3年以内2.1%、3年超5年以内2.2%、5年超7年以内2.3%) |
| 利子補給率(上限) | 運転資金2.0%、設備資金2.5% |
| 信用保証料率 | 0.45%〜2.20%(融資期間・返済回数等により異なる) |
| 返済方法 | 元金均等の分割返済に限られる |
信用保証料とは、信用保証協会の保証を受ける対価として支払う費用です。据置期間とは、借りてからしばらくの間、元金の返済をせず利息だけを支払う期間のことです。元金均等返済とは、毎回同じ額の元金に、その時点の残高に応じた利息を加えて返す方法を指します。
創業支援資金の申込みでは、まず次の2つが条件になります。
- 個人は習志野市内に住所があること、会社は市内に所在していること(市内に本店または支店の登記があること)
- 市税(転入して1年未満の場合は前に住んでいた市区町村の税)を滞納していないこと
このほか、制度全体の基本要件として、市内に店舗・工場・事業所・営業所などがあることも求められています。そのうえで、リーフレットにある次の区分のいずれかに当てはまる必要があります。
- 事業をしておらず、1か月以内に市内で事業を始める個人
- 事業をしておらず、2か月以内に会社を設立して市内で事業を始める個人
- 新たに会社を設立し、市内で事業を始める会社
- 事業を始めてから5年未満の個人または会社
2つ目と3つ目はどちらも会社を作って始める場合ですが、申し込む時点で会社ができているかどうかが違います。2つ目は、会社の設立前に個人として申し込む場合、3つ目は、設立した会社自身が申し込む場合です。
個人の場合は市内に住所があることが条件のため、市外に住んでいて習志野市内に店舗を出す個人事業主は、創業支援資金の対象になりません。また、勤務経験を活かして独立する人向けの「独立開業資金」という別の資金もありますが、創業支援資金との併用はできません。
利子補給で、利息の負担はどこまで下がるか
この制度の大きな特徴は、事業者が支払った利息の一部を、市が後から補ってくれる「利子補給」です。上の表の利子補給率は上限で、融資利率が上限と同じかそれより低い場合は「融資利率−0.1%」が補給されると案内されています。たとえば運転資金を融資期間5年で借りた場合、融資利率2.2%に対して補給率の上限は2.0%なので、差し引きで利息の負担は年0.2%程度まで下がる計算になります。ただし、これとは別に信用保証料(0.45%〜2.20%)がかかります。保証料のかからない公庫と比べるときは、保証料を含めた負担で比べる必要があります。
ただし、利子補給には次の点に注意が必要です。
- 利息はいったん全額を金融機関に支払い、半年ごとに市へ申請して補給を受けます(1〜6月分は8月、7〜12月分は翌年2月に受付)。
- 補給を受けるには、市内に住所と店舗・事業所などがあり、市内で同じ事業を続けていること、返済が遅れていないこと、市税を滞納していないこと、当初の貸付期間内であることが条件です。
- 市は、利子補給の制度は年度ごとに見直しを行い、借りている期間の途中でも補給率や要件が変わったり、中止されたりする場合があると案内しています。令和8年度の補給は、国の物価高騰対応重点支援地方交付金を活用したものと説明されています。
借入期間の最後まで今の補給率が続くとは限らないため、資金計画では「補給がなくなっても返済できるか」を確認したうえで、補給は上乗せの効果として見込んでおくと安全です。
申込みから融資実行までの流れ
この制度で借りるときに関わる機関と、それぞれの役割を、融資の実行後の返済・利子補給までのお金の流れとあわせて図にすると、次のようになります。番号は、下の申込みの流れで出てくる順番です。
図解|習志野市の制度融資に関わる機関と役割
① 取扱金融機関(7機関22支店)
相談と必要書類の提出先。確認・審査を行い、市の決定を受けて融資を実行する
② 習志野商工会議所
市から委託を受けた申込み・問合せの窓口。申請の受付と内容確認を行う
③ 千葉県信用保証協会
審査のうえ、融資の保証人の役割を担う
④ 習志野市
申請内容を審査して融資の可否を決める。要件を満たせば、事業者が支払った利息の一部を半年ごとに補給する
市のリーフレットでは、申込みから融資までの流れが次のように案内されています。日数の目安は、習志野商工会議所が受理してから2〜4週間程度です。
- 申請書などの必要書類を取扱金融機関に提出します。
- 金融機関が確認・審査したあと、習志野商工会議所が申請を受け付け、千葉県信用保証協会が審査します。
- 信用保証協会の保証が決まると、市が申請内容を審査して融資の可否を決めます。
- 市の決定を受けて、金融機関が融資を実行します。
申込み・問合せの窓口は、市から委託を受けた習志野商工会議所とされています。一方で、市のホームページには「利用をお考えの場合は、各金融機関に御相談ください」ともあります。利用を考え始めたら、まずは取扱金融機関か商工会議所のどちらかに相談するところから始めるとよいでしょう。
創業支援資金の申込みには、千葉県信用保証協会所定の創業計画書と、自己資金の額や借入金の額が確認できる書類が必要です。設備資金の場合は、見積りの段階で申請する必要があり、契約を結んだ後や工事に着手した後に申請すると、融資を受けられません。なお、初めてこの制度を利用する場合などは、審査期間が通常より長くなることがあると案内されています。
公庫の融資との違い
創業支援資金と公庫の融資を、使い分けの判断に関わる点で比べると次のようになります。
| 習志野市の創業支援資金 | 公庫の融資 | |
|---|---|---|
| お金を貸す相手 | 市が指定した取扱金融機関 | 公庫(政府系の金融機関)が直接貸す |
| 申込みの対象 | 個人は市内に住所、会社は市内に所在(創業予定〜創業5年未満) | 市の制度のような「市内に住所・所在がある」という要件はない |
| 信用保証協会の保証 | 必要(信用保証料がかかる) | 不要 |
| 利息の負担を下げる仕組み | 市の利子補給(年度ごとに見直しあり) | 市の利子補給の対象外(創業塾などの特定創業支援等事業を修了すると利率が下がる優遇あり。後述) |
| 審査の流れ | 金融機関・信用保証協会・市の3段階 | 公庫の審査 |
公庫は、融資が決まるまでの平均所要日数を2〜3週間程度と案内しています。市の制度も商工会議所の受理後2〜4週間程度が目安とされていて、どちらも開業日から逆算して早めに動く必要がある点は同じです。
使い分けの考え方
習志野市内で開業し、市の要件(個人は市内に住所、会社は市内に所在)を満たすなら、まず市の創業支援資金を候補に入れ、利子補給と信用保証料の両方を含めた実際の負担で公庫と比べる、というのが基本の考え方です。そのうえで、次のような点が判断の分かれ目になります。
| こんな場合 | 候補になりやすいもの | 理由 |
|---|---|---|
| 市外に住んでいて、習志野市内で個人事業主として開業する | 公庫 | 創業支援資金は、個人の場合は市内に住所があることが条件のため |
| 借入期間全体の利息の負担をできるだけ抑えたい | 市の制度(比較のうえで) | 利子補給が続けば負担が大きく下がる。ただし信用保証料と、補給が見直される可能性を含めて比べる |
| 1,000万円を超える資金が必要 | 公庫、または組み合わせ | 創業支援資金の限度額は1,000万円以内のため |
| 地元の金融機関と取引を始めておきたい | 市の制度 | 市内の取扱金融機関を通じて借りるため、その金融機関との取引が始まる |
また、習志野市の「ならしの創業塾」のような特定創業支援等事業を修了すると、公庫の新規開業資金の貸付利率の引き下げや、千葉県信用保証協会の創業関連保証を事業開始の6か月前から使えるようになるといった優遇を受けられます。どちらで借りる場合にも関わるので、開業の時期に余裕があれば、先に検討しておく価値があります。内容は習志野市が実施している創業支援についてで紹介しています。申込み窓口となる習志野商工会議所の活用方法は習志野商工会議所を活用した創業支援もあわせてご覧ください。
この記事の内容は、令和8年度(令和8年4月版のリーフレット)の情報です。融資利率・利子補給率・要件は年度ごとに変わることがあるため、申込みを考える際は、必ず習志野市産業振興課または習志野商工会議所で最新の内容を確認してください。
まとめ
習志野市中小企業資金融資制度の創業支援資金は、市内で事業を始める人や開業5年未満の事業者(個人は市内に住所、会社は市内に所在していることが条件)が使える、限度額1,000万円以内の融資です。市の利子補給によって利息の負担が大きく下がる可能性がある一方、信用保証料がかかり、補給の内容は年度ごとに見直されます。この要件を満たして市内で開業するなら、まず創業支援資金を候補に入れ、利子補給と保証料を含めた実際の負担で公庫と比べてみてください。市外に住んで個人事業主として開業する場合や1,000万円を超える資金が必要な場合は、公庫が中心の候補になります。
