制度融資と公庫融資、両方使うことはできるか


創業融資を調べていると、日本政策金融公庫(以下、公庫)の融資と、自治体の制度融資(自治体・金融機関・信用保証協会が連携して行う融資)の2つが候補に挙がります。そこで「どちらか一方を選ぶしかないのか、それとも両方から借りられるのか」で迷っていませんか。2つの融資の違いは創業融資と信用保証協会付き融資の違いで整理し、その中で「両方を検討する余地もあります」と書きました。この記事はその続きとして、両方を使う場合の仕組みと注意点を掘り下げます。

先に結論を書くと、公庫の融資と制度融資を組み合わせて使うことは、仕組みとして想定されています。公庫は民間の金融機関と連携して融資する「協調融資」に取り組んでいると公式に説明しています。また、千葉県の制度融資の案内(令和8年度 中小企業者向け 融資のしおり)を確認した範囲では、公庫の融資を使っている人を対象外とする記述は見当たりませんでした。ただし、両方とも希望額どおりに借りられるかどうかは、それぞれの審査で決まります。判断の軸は「両方使えるか」より、1つの資金計画のどこをどちらでまかない、合計の返済を事業の利益でまかなえるかです。

「両方使う」には2つの形がある

公庫と制度融資を両方使う方法には、大きく分けて次の2つの形があります。

形中身
協調融資1つの資金計画に対して、公庫と民間の金融機関が連携して融資する。公庫の説明では、本人の同意を得て公庫と金融機関が情報交換を行い、設備投資の必要額を分担したり、必要な運転資金を連携して支援したりする
それぞれに申し込む公庫と、制度融資を扱う金融機関に別々に申し込み、それぞれが審査する。制度融資の場合は、金融機関に加えて信用保証協会の保証審査も入る

公庫は、創業などの分野で、公庫の融資商品と民間金融機関の融資商品を組み合わせた「協調融資商品」を創設しています。ただし、公庫の説明は民間金融機関との連携についてのもので、組み合わせる民間の融資が制度融資にあたるかどうかまでは書かれていません。制度融資と協調融資の形で組み合わせられるかは、制度融資を扱う金融機関や公庫の支店に尋ねてみてください。

公庫の創業融資と千葉県の「創業資金」を並べてみる

協調融資でも、それぞれに申し込む場合でも、公庫の融資と制度融資は別々の融資です。借りられる額や返済期間、保証料の有無は、それぞれの制度の条件に従います。千葉県で開業する場合を例に、公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」と、千葉県の制度融資のうち創業者向けの「創業資金(一般枠)」を並べると次のとおりです。後半で取り上げる据置期間のずれや保証料の違いは、この表の条件の差から生じます。

項目公庫:新規開業・スタートアップ支援資金千葉県制度融資:創業資金(一般枠)
借りる相手公庫民間の金融機関(千葉県信用保証協会の保証付き)
対象新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方創業する方、または創業後5年未満の方(県内で事業を行う中小企業者等)
融資限度額7,200万円設備資金3,500万円、運転資金2,500万円
返済期間(うち据置期間)設備資金20年以内(5年以内)、運転資金10年以内(5年以内)設備資金7年以内(1年以内)、運転資金5年以内(1年以内)
金利基準利率(要件に該当すれば特別利率)固定金利1.5%〜1.9%(返済期間の長さによる)
信用保証料かからない保証料率0.4%〜0.6%(県の補助0.4%を差し引いた後の率)

表の内容は、公庫の制度紹介ページと、千葉県の「令和8年度 中小企業者向け 融資のしおり」で2026年10月に確認したものです。金利・保証料率・限度額は年度ごとに見直されることがあるため、申し込む前に最新の案内を確認してください。

表に出てくる据置期間とは、借りてから一定の期間、元金の返済をせずに利息だけを支払う期間のことです。信用保証料は、信用保証協会に保証人になってもらう対価として支払う費用です。千葉県のしおりによると、創業資金(一般枠)では保証料率のうち0.4%を県が補助し、補助を受けるための手続きは不要とされています。

自治体による支援は、制度融資の側だけにあるとは限りません。たとえば八千代市には、日本政策金融公庫船橋支店の融資を利用した創業者を対象にした利子補給の制度があります(詳しくは八千代市が実施している創業支援について)。一方、習志野市には、市の融資制度の「創業支援資金」に利子補給を組み合わせた仕組みがあります(詳しくは習志野市の中小企業融資制度、公庫融資とどう使い分けるか)。開業する市区町村の支援が、公庫と制度融資のどちらに付いているかも、組み合わせを考える材料になります。

両方使うときに確認しておきたいこと

1. 公庫の創業計画書には、ほかの金融機関からの借入も書く

公庫の創業計画書の様式には、「お借入の状況」(借入先・使いみち・借入残高・年間返済額)と、「必要な資金と調達方法」の欄があります。「必要な資金と調達方法」の右側(調達方法)には、自己資金や公庫からの借入と並んで、ほかの金融機関からの借入を書く欄があり、左側(必要な資金)と右側の合計を一致させる形になっています。

つまり、両方を使う場合は、1つの資金計画の中で、どの部分を公庫で、どの部分を制度融資でまかなうのかを分けて書くことになります。先に制度融資を受けていれば、その借入は「お借入の状況」にも書きます。計画書全体の書き方は創業計画書の書き方(融資を通すための視点)で紹介しています。

2. 返済は2つを合計して考える

借入先が2つになると、毎月の返済も2本になります。創業計画書の「事業の見通し」欄で計算した利益で、生活費と2つの融資の返済の合計をまかなえるかを確認しておきます。売上の見通しの立て方は創業計画書の「売上予測」に根拠を持たせる書き方で扱っています。

3. 据置期間の長さが違い、返済の始まる時期がずれる

先ほどの表のとおり、据置期間は公庫が5年以内、千葉県の創業資金が1年以内です。両方を使い、それぞれ据置期間を設けた場合、2つの融資の元金返済が始まる時期がずれ、途中から返済額が増える月が出てきます。返済額の合計を、据置期間が終わった後の月も含めて月ごとに並べておくと、資金が足りなくなる時期を前もって把握できます。

4. 費用のかかり方が違う

公庫の融資には信用保証料がかかりませんが、制度融資には金利とは別に信用保証料がかかります。金利だけで比べず、保証料も含めた負担で比べてください。

5. 自己資金はどちらの申込みでも確認される

公庫の融資でも制度融資でも、自己資金(創業のために自分で用意した元手)の有無は確認事項です。審査で見られる点は創業融資の審査で見られるポイントにまとめています。

公庫に一本化するか、両方使うか

必要な金額を公庫の融資だけでまかなえるなら、借入先が1か所で済み、申込みの手続きも返済の管理もシンプルです。一方、両方を使うことを考える場面としては、次のような場合があります。

  • 公庫の融資だけでは、必要な資金に届かない場合
  • 地元の金融機関とも、開業の時点から取引を始めておきたい場合

2つめについて、公庫自身も協調融資の説明の中で、民間金融機関の強みとして「地域に根差したきめ細やかな対応」や、手形貸付・当座貸越といった多様な資金調達の手段を挙げています。

どちらの場合も、検討の順番は同じです。まず開業に必要な資金の全体を見積もり、次にそのうちどの部分をどちらの融資でまかなうかを決め、最後に2つの返済の合計を事業の利益でまかなえるかを確かめます。

まとめ

公庫の融資と制度融資は、どちらか一方しか使えないものではなく、組み合わせて使うことが仕組みとして想定されています。ただし、借りられる額はそれぞれの審査で決まります。公庫と民間金融機関が連携する協調融資のほか、それぞれに申し込む形もあります。両方を使う場合は、公庫の創業計画書にほかの金融機関からの借入も含めて1つの資金計画として書き、据置期間の違いで返済の始まる時期がずれることや、制度融資には信用保証料がかかることも踏まえて、2つの返済の合計を月ごとに確認しておきます。金利や限度額は年度ごとに見直されることがあるため、申し込む前に公庫と自治体の最新の案内を確認してください。


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