インボイス登録番号、名刺やHPにどう表示すべきか


インボイス制度の登録を済ませて「登録通知書」が届くと、Tから始まる登録番号が手元に残ります。この番号を名刺やホームページにも載せたほうがいいのか、載せるならどう書けばいいのか、迷いませんか。

先に答えを書くと、消費税法が登録番号の記載を求めているのは、取引先に渡す請求書や領収書などの書類です。名刺やホームページに載せるかどうかは、事業者が決めてかまいません。ただ、個人事業主の場合は、番号を公開すると誰でも国税庁のサイトで本名を確認できるようになります。この記事では、番号を載せる場所ごとの扱いと、載せる前に知っておきたい点を整理します。

登録番号は「T+13桁の数字」

インボイス登録番号(正式には「適格請求書発行事業者の登録番号」)は、税務署に登録申請書を出し、登録を受けたときに通知される番号です。国税庁の適格請求書発行事業者公表サイト(以下「公表サイト」)では、番号の構成が次のように説明されています。

事業者の区分登録番号の構成
会社などの法人(法人番号がある事業者)「T」+法人番号(13桁)
個人事業主など(上記以外)「T」+13桁の数字

個人事業主の13桁には、マイナンバー(個人番号)は使われません。法人番号とも重ならない、事業者ごとの番号です。

番号の記載が求められるのは請求書などの書類

インボイスの登録をした事業者(適格請求書発行事業者)は、取引の相手が課税事業者(消費税を納める事業者)で、その相手から求められたときは、適格請求書(いわゆるインボイス)を渡さなければなりません。適格請求書とは、決められた項目を記載した請求書・納品書・領収書などのことで、その最初の項目が「氏名又は名称及び登録番号」です。

根拠条文|消費税法第57条の4第1項(適格請求書発行事業者の義務)

要旨:登録した事業者は、課税事業者である取引相手から求められたら、登録番号などを記載した適格請求書を渡さなければならない(事業の性質上、渡すのが難しい一部の取引を除く)。

※以下は条文の原文です。読みづらければ読み飛ばして、上の要旨だけ読んで先へ進んで大丈夫です。

適格請求書発行事業者は、国内において課税資産の譲渡等(第七条第一項、第八条第一項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるものを除く。以下この条において同じ。)を行つた場合(第四条第五項の規定により資産の譲渡とみなされる場合、第十七条第一項又は第二項本文の規定により資産の譲渡等を行つたものとされる場合その他政令で定める場合を除く。)において、当該課税資産の譲渡等を受ける他の事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。以下この条において同じ。)から次に掲げる事項を記載した請求書、納品書その他これらに類する書類(以下第五十七条の六までにおいて「適格請求書」という。)の交付を求められたときは、当該課税資産の譲渡等に係る適格請求書を当該他の事業者に交付しなければならない。ただし、当該適格請求書発行事業者が行う事業の性質上、適格請求書を交付することが困難な課税資産の譲渡等として政令で定めるものを行う場合は、この限りでない。
一 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号(第五十七条の二第四項の登録番号をいう。次項第一号及び第三項第一号において同じ。)
(第二号から第六号は省略)

この条文が登録番号の記載を求めているのは、適格請求書という「書類」です。小売業や飲食店などが使える簡易な様式(適格簡易請求書)や、値引き・返品のときに渡す書類(適格返還請求書)にも、同じく登録番号の記載が求められています。名刺やホームページへの表示を求める定めは、この条文にも、公表サイトの説明にも見当たりませんでした。取引先が仕入税額控除(=仕入れにかかった消費税を、納める消費税から差し引く仕組み)を受けるには、原則として帳簿と適格請求書などの保存が必要です(消費税法第30条第7項)。登録番号が抜けた書類は適格請求書の記載事項を満たさないため、請求書のテンプレートには必ず番号を入れてください。

番号を公開すると、本名が確認できるようになる

名刺やホームページに番号を載せるかどうかを考えるうえで知っておきたいのが、公表サイトの仕組みです。公表サイトは、受け取った請求書の番号が有効な登録番号かを取引先が確認するためのサイトで、登録番号でしか検索できません。検索画面で氏名や会社名を入れて番号を探すことはできない仕組みです。

会社の場合は、番号を入れると会社名と本店の所在地が表示される仕組みです。会社名で取引しているなら番号から新たにわかることは少なく、載せるかどうかは、主に取引先への見せ方の問題になります。気をつけたいのは個人事業主です。

個人事業主の場合、番号を入れると表示されるのは次の項目です。

項目公表されるか
氏名公表される(申し出れば、旧姓〔外国人住民の場合は通称〕で公表することや、戸籍上の氏名と併記することもできる。旧姓は住民票に併記しておくのが原則)
登録番号・登録年月日公表される
登録の取消・失効の年月日該当すれば公表される
屋号・事務所の所在地本人が申し出た場合だけ公表される(公表できるのはそれぞれ1つ)
住所公表されない

国税庁は、屋号を公表する申し出をしなければ、公表サイトの情報によって屋号と氏名が直接結びつけられることはないと説明しています。ただし、これは「番号から屋号はわからない」という意味です。屋号やペンネームで活動している人が、その名前と並べてホームページや名刺に登録番号を載せると、見た人は番号を公表サイトに入れるだけで本名を確認できます。請求書は取引先にしか渡りませんが、ホームページは誰でも見られる点が違います。

本名を伏せて活動している配信者・クリエイターや、屋号だけで仕事をしている人は、番号を公開してよいかを先に考えておくと安心です。屋号を付けるかどうかの考え方は屋号はあったほうがいいか?で整理しています。

場所ごとの扱いと考え方

ここまでを、番号を載せる場所ごとにまとめると次のようになります。

載せる場所消費税法上の扱い載せると起きること
請求書・領収書・納品書適格請求書として渡すなら記載が必要取引先が仕入税額控除を受けるための書類になる
ホームページ載せるかどうかは任意取引の前から登録の有無を確認してもらえる。個人事業主は、見た人が本名を確認できる
名刺載せるかどうかは任意受け取った人が登録の有無を確認できる。登録をやめたときは表示の見直しが要る

ホームページや名刺に載せると、取引を始める前の段階で「この事業者は登録しているか」を相手が確認できます。取引先が会社などの課税事業者で、登録の有無を気にする相手が多い業種なら、載せておくと話が早くなります。一方で、取引先の多くが一般の消費者や免税事業者(消費税の納税が免除されている事業者)で、登録の有無を聞かれることがほとんどない業種なら、請求書に書いてあれば足ります。登録していることは伝えたいけれど番号までは公開したくない場合は、ホームページに「インボイス登録済み(登録番号は請求書に記載します)」とだけ書いておく方法もあります。インボイス登録そのものをするかどうかで迷っている段階なら、先にインボイス登録すべきか?免税事業者のままでいるべきか?をご覧ください。

載せるときの書き方

載せると決めたら、押さえておきたいのは次の3点です。

  1. 「T」を省かず、通知された番号をそのまま書きます。Tも含めて登録番号です。
  2. 「登録番号:T1234567890123」のように、何の番号かがわかる見出しを付けます。「適格請求書発行事業者登録番号」と正式名称で書いても、「インボイス登録番号」と書いても、意味は伝わります。
  3. 載せる前に、自分の番号を公表サイトで検索し、表示される氏名・屋号が想定どおりかを確かめます。

開業の準備中で、まだ登録の通知が届いていない場合は、番号がないので名刺には載せられません。通知を待ってから刷るか、最初の名刺には載せずにおくと、刷り直しを避けられます。

登録をやめたら、番号の表示も外す

インボイスの登録をやめた後や、登録が取り消された後に、登録番号を書いた請求書を渡し続けることはできません。消費税法は、登録をしていない人が、適格請求書と誤認されるおそれのある書類を渡すことを禁じています。

根拠条文|消費税法第57条の5(適格請求書類似書類等の交付の禁止)

要旨:登録していない人は、適格請求書と誤認されるおそれのある書類を渡してはならない。登録している人も、偽りの記載をした適格請求書を渡してはならない。

※以下は条文の原文です。読みづらければ読み飛ばして、上の要旨だけ読んで先へ進んで大丈夫です。

適格請求書発行事業者以外の者は第一号に掲げる書類及び第三号に掲げる電磁的記録(第一号に掲げる書類の記載事項に係るものに限る。)を、適格請求書発行事業者は第二号に掲げる書類及び第三号に掲げる電磁的記録(第二号に掲げる書類の記載事項に係るものに限る。)を、それぞれ他の者に対して交付し、又は提供してはならない。
一 適格請求書発行事業者が作成した適格請求書又は適格簡易請求書であると誤認されるおそれのある表示をした書類
二 偽りの記載をした適格請求書又は適格簡易請求書
三 第一号に掲げる書類の記載事項又は前号に掲げる書類の記載事項に係る電磁的記録

この条文が対象にしているのは請求書などの書類で、名刺やホームページの表示そのものではありません。ただ、公表サイトには登録の取消・失効の年月日も表示されるため、古い番号が残っていると、相手が確認したときに食い違いが生じます。登録をやめるときは、請求書のテンプレートに加えて、ホームページや名刺の表示も一緒に見直すと二度手間になりません。

まとめ

消費税法が登録番号の記載を求めているのは、適格請求書として渡す請求書・領収書などの書類で、名刺やホームページに載せるかどうかは事業者が決められます。載せれば取引の前から登録の有無を確かめてもらえる一方、個人事業主の場合は、番号から公表サイトで本名を確認できるようになります。屋号やペンネームで活動している人は、そのことを踏まえて載せる場所を決めてください。載せるときは「T」を含めた番号をそのまま書き、登録をやめたときは請求書・ホームページ・名刺の表示をまとめて外します。


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