YouTubeのスパチャとメンバーシップ、Twitchのサブスク、ほかの配信アプリの投げ銭、企業案件の報酬。活動の場が増えると、入金のタイミングも金額の見え方もプラットフォームごとにバラバラになります。確定申告の時期になって、「どこにいくら入ったのか、全部拾えているのか」が分からなくなっていませんか。
この記事では、収益の入り口が複数ある配信者に向けて、確定申告で困らない記録の残し方をまとめます。帳簿は1つにまとめ、プラットフォームごとに「どの明細の、どの金額を、いつの収入として、どの相場で円にするか」を最初に確認しておけば、あとは毎月同じ手順を繰り返すだけです。
収益は合計して申告する
確定申告書には、YouTubeの分、Twitchの分と分けて書く欄はありません。配信活動の収入は、同じ所得の区分(事業所得または雑所得)として合計して申告します。事業所得は事業として続けている活動から生じる所得、雑所得は事業と呼べるほどの規模・継続性がない活動から生じる所得などを指します。どちらにあたるかの考え方は個人勢配信者、いつ開業届を出すべきかで整理しています。
合計して申告する以上、1つでも拾い漏れがあれば、それがそのまま申告漏れになります。事業所得か雑所得かにかかわらず、1年分の収入を正しく合計するには、プラットフォームごとの毎月の記録が欠かせません。
記録が求められる人と、保存期間
国税庁は、青色申告の人に限らず、白色申告(青色申告の承認を受けずに行う確定申告)の人にも記帳と帳簿保存の制度を設けています。何が求められるかは、所得の区分で次のように分かれます。
| 所得の区分 | 記帳 | 帳簿・書類の保存 |
|---|---|---|
| 事業所得 | 必要(収入・経費について、年月日・相手方・金額等を記載) | 必要。収入・経費を記載した帳簿は7年、請求書・領収書等の書類は5年 |
| 業務に係る雑所得(事業と呼べる規模に至らない、継続的な活動からの所得) | 記帳制度の対象ではない | 前々年の業務に係る雑所得の収入金額が300万円を超える場合、請求書・領収書等のうち現金や預金の出し入れの際に作成・受領したものを5年間保存 |
事業所得の人の場合、売上げに関する帳簿を保存していなかったり、帳簿の売上げの記載が不十分だったりしたことが税務調査で把握されると、申告漏れに対する加算税の割合が5%または10%上乗せされます(令和5年分の確定申告に対する修正申告等から)。加算税とは、申告した税額が少なかったり申告が遅れたりした場合に、本来の税金に上乗せして課される税金のことです。事業所得の人にとって、売上げの帳簿は、つけて保存しておくこと自体が義務です。
記帳は、取引を1件ずつ書かずに日々の合計金額をまとめて書く簡易な方法でもよいとされているので、投げ銭を1件ずつ書き出す必要はありません。青色申告の場合は、これに加えて青色申告の要件を満たす帳簿が必要です(青色申告とは何か、白色申告との違い参照)。
プラットフォームごとに確認しておく5つのこと
集計がバラバラになるのは、プラットフォームごとに明細の出し方が違うからです。最初に次の5点を確認して、メモにまとめておきます。
| 確認すること | 中身 |
|---|---|
| どの明細を使うか | 収益レポートや支払明細など、そのプラットフォームの中で、収益の額と確定した時期が分かるものを毎月同じように使う |
| どの金額を収入にするか | 視聴者が支払った総額か、プラットフォームから支払われる手取りか。どちらにするかは1つに決めて、すべてのプラットフォームでそろえる。総額にする場合は、差し引かれた手数料を経費として書く |
| いつ収益が確定するか | そのプラットフォームで、受け取る金額が確定するのはいつか(締め日など)。帳簿には、確定した時点の収入として書く |
| 通貨 | 円で支払われるか、ドル等の外貨で支払われるか |
| 入金先 | どの口座(または決済サービス)に入金されるか |
2つ目の「総額か手取りか」は、YouTubeのスパチャを例にスパチャは総額と手取りで税金が変わる?差が出るのは「収入金額」で決まる基準で詳しく扱っています。どちらで書いても所得は同じですが、雑所得の書類保存が必要になる「前々年の収入金額300万円超」のように、収入金額で判定される基準では結果が変わることがあります。プラットフォームによって書き方が混ざると、収入金額が何を足したものなのか後から説明しにくくなるので、書き方は1つにそろえておきます。
3つ目の「いつ収益が確定するか」は、年末をまたぐ収益で差が出ます。所得税では、お金が口座に入った日ではなく、受け取る権利が確定した時点で収入に入れるのが原則です(権利確定主義といいます)。この原則はどのプラットフォームにも当てはまり、一部だけ入金日で書くことはできません。違うのは、権利が確定するタイミングです。たとえば12月分の収益の金額が12月末に確定し、支払いが1月になるプラットフォームなら、その収益は確定した年の収入です。原則どおりに計算する場合、入金日だけを見て帳簿をつけていると、年末の収益を翌年分に入れてしまうおそれがあるため、各プラットフォームの締め日と支払日は確認しておいてください。
根拠条文|所得税法第36条第1項(収入金額)
要旨:その年の収入は、その年に「収入すべき金額」で計算します。これは、受け取る権利が確定した金額を指すと解されています(権利確定主義)。
※以下は条文の原文です。読みづらければ読み飛ばして、上の要旨だけ読んで先へ進んで大丈夫です。
その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもつて収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする。
例外として、業務の収入と経費をまとめて、実際に入金・支払いがあった時点で計算する方法(現金主義といいます)が認められる場合があります。使えるのは、配信の収入が業務に係る雑所得にあたり、配信以外も含めた前々年の業務に係る雑所得の収入金額が300万円以下のときです(表にある書類保存の基準と同じ300万円です)。使う場合は、確定申告書にこの特例を受ける旨を書く必要があり、収入と経費は原則としてすべてこの方法で計算します。この方法を選んだ場合、後の「毎月やること」の手順2・3は「確定した月」を「入金された月」と読み替え、確定済みで未入金の分を帳簿に入れる必要はありません。
根拠条文|所得税法第67条第2項(小規模事業者等の収入及び費用の帰属時期)
要旨:政令で定める要件(所得税法施行令196条の2:前々年の業務に係る雑所得の収入金額が300万円以下)を満たす人は、業務に係る雑所得を、その年に実際に入金した金額と支払った費用の額で計算できます。
※以下は条文の原文です。読みづらければ読み飛ばして、上の要旨だけ読んで先へ進んで大丈夫です。
雑所得を生ずべき業務を行う居住者のうち小規模な業務を行う者として政令で定める要件に該当するもののその年分の当該雑所得を生ずべき業務に係る雑所得の金額(山林の伐採又は譲渡に係るものを除く。)の計算上総収入金額及び必要経費に算入すべき金額は、政令で定めるところにより、その業務につきその年において収入した金額及び支出した費用の額とすることができる。
外貨で支払われる収益は、円に換算して記録する
海外のプラットフォームからドル等の外貨で支払われる場合は、円に換算して帳簿に書きます。所得税の通達(国税庁が法令の解釈を示したもの)では、円換算は原則として、その取引を計上すべき日の「電信売買相場の仲値」によるとされています。TTMとも呼ばれ、金融機関が公表する、外貨を売るときの相場と買うときの相場の中間の値です。相場は原則として自分が主に取引している金融機関のものを使いますが、合理的なものを継続して使っていれば認められます。
事業所得や雑所得の計算では、継続して使うことを条件に、次のような簡便な方法も認められています。
- 収入は取引日の電信買相場(TTB。金融機関が外貨を買い取って円を支払うときの相場)、経費は取引日の電信売相場(TTS。金融機関が円を受け取って外貨を売るときの相場)で換算する
- 前月末・前週末、または当月初め・当週初めの相場で換算する
- 前月や前週の平均相場のように、1か月以内の一定期間の平均値で換算する
配信の収益は月ごとに集計することが多いので、たとえば「毎月の収益を、前月末の仲値で円に直す」と決めておけば、取引ごとに相場を調べる必要がなくなります。選んだ方法もメモに加え、継続して使います。
毎月やること
メモができたら、あとは毎月同じ手順を繰り返します。年に1回まとめてやろうとすると、明細の表示期間が過ぎていて確認できない、ということも起こりえます。
- 各プラットフォームの、決めておいた明細をダウンロードして保存します。ファイル名に年月とプラットフォーム名を入れておくと、後で探しやすくなります。
- 明細から、決めておいた金額(総額または手取り)を、確定した月の収入として帳簿に書きます。総額にする場合は手数料も経費として書き、外貨の場合は決めておいた相場で円に換算します。
- 口座への入金と突き合わせます。確定済みでまだ入金されていない分(翌月以降に支払われる分)も、確定した月の収入として帳簿に入っているかを確かめます。
- 企業案件のように請求書を出して報酬を受け取る収入も、同じ帳簿に書きます。
帳簿は、会計ソフトでも表計算ソフトでもかまいません。会計ソフトなら、売上高などの収入の科目(帳簿で取引を分類する項目)の下に、プラットフォームごとの細かい区分(補助科目)を作っておくと、プラットフォーム別の合計と全体の合計がどちらもすぐに出せます。
まとめ
複数のプラットフォームの収益も、申告では合計して書くので、帳簿は1つにまとめます。プラットフォームごとに「どの明細の、どの金額を、いつ確定した収入として、どの相場で円にするか」を確認してメモにしておけば、プラットフォームが増えても、毎月の作業は帳簿の行が増えるだけです。手始めに、今使っているプラットフォームの明細を開いて、締め日と支払日を確かめるところから始めてみてください。
