海外のお客さまに商品を発送した、海外の会社からデザインや翻訳の仕事を受けた。こうした取引が始まったとき、「この売上に消費税はかかるのか」「請求書に消費税を上乗せすべきか」で手が止まりませんか。
国内の取引と同じ感覚で処理すると、本来かからない消費税を請求してしまったり、逆に必要な書類を残していなかったりすることがあります。この記事では、輸出取引に消費税がかからない仕組みと、その扱いを受けるための条件、創業期の事業者が押さえておきたい注意点を整理します。
輸出取引は消費税が「免除」される
国内で商品を売ったりサービスを提供したりすると、原則として消費税がかかります。ただし、その取引が輸出取引にあたる場合は、消費税が免除されます。これを「輸出免税」といいます。消費税は国内で消費されるものに負担を求める税なので、外国で消費されるものには課税しない、という考え方に基づく制度です。
輸出免税の特徴は、売上に消費税がかからない一方で、その取引のために国内で支払った経費(仕入れた商品、梱包資材、広告費等)に含まれる消費税は、申告の際に差し引くことができる点です。この差し引く仕組みを仕入税額控除といいます。同じく消費税がかからない「非課税取引」(土地の売買や預金の利子等)では、原則としてこの仕入税額控除ができないため、免税と非課税は結果が大きく異なります。なお、輸出免税にあたる取引では消費税がかからないため、請求書に消費税を上乗せする必要はありません。
免税になる取引の範囲
国税庁は、免税になる輸出取引等の範囲として、主に次の4つを挙げています。創業期の事業者に当てはまりそうな例と合わせて整理すると、次のとおりです。
| 免税になる取引 | 当てはまりそうな例 |
|---|---|
| 国内からの輸出として行われる商品等の販売・貸付け | ハンドメイド作品や中古品を海外の購入者へ発送する |
| 国内と国外の間の通信や郵便 | (通信事業者・郵便事業者が行う取引のため、一般の事業者にはあまり関係しない) |
| 非居住者に対する著作権等の譲渡・貸付け | 海外の会社にイラストや写真の著作権を譲渡する |
| 非居住者に対するサービスの提供 | 海外の会社から翻訳や設計の仕事を受ける |
非居住者とは、日本国内に住所や居所(生活の拠点として一定期間住んでいる場所)を持たない個人と、日本国内に主たる事務所を持たない法人のことです。海外の会社であっても、日本国内に支店や出張所がある場合は、その支店等を通じた取引として扱われ、原則として免税になりません。
また、相手が非居住者であっても、国内で直接サービスを受けるものは免税になりません。国税庁は、国内での飲食や宿泊、国内にある物の運送や保管、理容・美容、国内での観劇等を例に挙げています。訪日中の外国人旅行者に国内でサービスを提供しても、相手が海外の人というだけでは免税にはならない点に注意してください。
インターネット経由のサービスは「免税」ではなく「対象外」になることがある
電子書籍や音楽、動画の配信、オンライン広告の配信のように、インターネット等を介して提供するサービスは「電気通信利用役務の提供」と呼ばれ、別のルールで判定します。このサービスは、受け手の住所等が国内にあるかどうかで国内の取引かどうかを判定するため、受け手が海外にいる場合は国外の取引になります。国外の取引は、そもそも消費税の課税の対象外(不課税)です。
一方、翻訳やデザイン制作のように、仕事そのものは国内で行い、完成した成果物をメール等で送るだけの場合は、送付が仕事に付随するものにとどまるため、電気通信利用役務の提供にはあたりません。国税庁も、著作物の制作のように、成果物の受け渡しにインターネット等を使っているだけの取引は電気通信利用役務の提供に該当しないと説明しています。この場合は、上の表の「非居住者に対するサービスの提供」として免税の扱いを検討します。
「免税」と「対象外(不課税)」は、どちらも売上に消費税がかからない点は同じですが、免税事業者(消費税の申告・納税が免除されている事業者)のままでいられるかどうかの判定(基準期間の課税売上高が1,000万円以下か。基準期間とは、個人事業主の場合はその年の前々年、法人の場合は原則として前々事業年度のことです)で扱いが変わります。
| 取引の区分 | 売上に消費税がかかるか | 1,000万円の判定に含めるか |
|---|---|---|
| 国内の通常の取引(課税) | かかる | 含める |
| 輸出取引(免税) | かからない | 含める |
| 国外の取引(不課税) | かからない | 含めない |
国税庁は、基準期間の課税売上高を「消費税が課税される取引の売上金額と、輸出取引などの免税売上金額の合計額」と説明しています。輸出の売上は消費税がかからなくても1,000万円の判定には含まれるため、輸出が伸びた2年後に課税事業者になることがあります。免税事業者と課税事業者の判定の考え方はインボイス登録すべきか?免税事業者のままでいるべきか?もあわせてご覧ください。
免税の扱いを受けるには、証明書類の保存が条件
輸出取引にあたるからといって、自動的に免税になるわけではありません。消費税法は、輸出取引であることを所定の方法で証明できない場合には免税の規定を適用しない、と定めています。
根拠条文|消費税法第7条第2項(輸出免税等)
要旨:輸出取引であることを財務省令で定める方法で証明できない場合、輸出免税は適用されません。
※以下は条文の原文です。読みづらければ読み飛ばして、上の要旨だけ読んで先へ進んで大丈夫です。
前項の規定は、その課税資産の譲渡等が同項各号に掲げる資産の譲渡等に該当するものであることにつき、財務省令で定めるところにより証明がされたものでない場合には、適用しない。
保存が必要な書類は、取引の種類によって次のように分かれます。いずれも整理して、7年間保存する必要があります。
| 取引の種類 | 保存する書類 |
|---|---|
| 税関で輸出の許可を受けて輸出する場合 | 輸出許可書 |
| 郵便で送る場合(1個あたりの価額が20万円超) | 輸出許可書 |
| 郵便で送る場合(20万円以下の小包郵便物・EMS(国際スピード郵便)) | 日本郵便から受け取った引受けを証する書類と、発送伝票等の控え(差出人・品名ごとの数量と価額・受取人・引受日が記載されたもの) |
| 郵便で送る場合(20万円以下の通常郵便物) | 日本郵便から受け取った引受けを証する書類(品名ごとの数量と価額を追記したもの) |
| 非居住者への著作権等の譲渡・サービスの提供 | 一定の事項が記載された契約書その他の書類 |
また、令和8年10月1日以後に行う商品の輸出では、支払いが取引の相手からのものだと明らかでない方法で代金を受け取るときは、上の書類に加えて、輸出先の税関が発行する輸入許可書等も保存する必要があります。国税庁は、現金で受け取る場合や、取引の相手以外の人から銀行振込等で受け取る場合を例に挙げています。相手から銀行振込で直接受け取る場合はこれにあたりません。海外の販売サイトや決済サービスを通じて代金を受け取っている場合は、誰から入金されているかを一度確認しておくと安心です。
輸出で消費税が戻ってくるのは、一般課税の課税事業者だけ
輸出の売上には消費税がかからない一方で、国内の仕入れや経費には消費税を払っています。そのため、売上の多くが輸出の事業者は、申告すると払った消費税のほうが多くなり、差額が戻ってくる(還付される)ことがあります。ただし、還付を受けられるかどうかは、事業者の立場と消費税の計算方法によって異なります。計算方法には、実際に払った消費税を差し引いて計算する一般課税(本則課税ともいいます)のほか、売上の消費税額に業種ごとの一定割合を掛けて計算する簡易課税や、売上の消費税額の2割を納める2割特例があります。
| 事業者の立場 | 輸出取引の扱い |
|---|---|
| 免税事業者 | そもそも消費税の申告・納税をしないため、輸出免税の規定は関係しない。還付もない |
| 課税事業者(簡易課税・2割特例) | 売上の消費税額をもとに納める税額を計算するため、輸出の売上からは還付が生じない |
| 課税事業者(一般課税) | 実際に払った消費税を差し引いて計算するため、還付が生じることがある |
一般課税(本則課税)と簡易課税の違いは消費税の本則課税と簡易課税、その違いについてで、2割特例はインボイス経過措置の見直し|2割特例から3割特例へで解説しています。国税庁は、輸出業者のように経常的に還付が生じる事業者は、免税事業者であっても課税事業者を選ぶことで還付を受けられると案内しています。ただし、課税事業者を選ぶと原則として2年間は免税事業者に戻れない等の制約があるため、輸出以外の売上も含めた数年分の見通しで判断してください。還付を早く受けたい場合の方法としては、課税期間を短縮するとどんなメリットがあるかで紹介している課税期間の特例もあります。
まとめ
輸出取引や非居住者へのサービスの提供は、消費税が免除される一方で、国内の経費にかかった消費税は差し引けます。ただし、相手が海外の人でも国内で直接受けるサービスは免税にならず、インターネット経由の配信サービスは不課税として別に扱われます。免税の扱いを受けるには、取引の種類に応じた証明書類を7年間保存することが条件です。輸出の売上は1,000万円の判定に含まれる点、輸出による還付を受けられるのは一般課税の課税事業者に限られる点もあわせて押さえておくと、海外との取引が増えてきたときの判断がしやすくなります。
